第3回学会奨励賞審査結果について

日本文化政策学会では、2024年 1 月 1 日より第 3 回の学会奨励賞のための応募受付を開始し、受理した論文および著書について審査を行いました。以下に、その結果をお知らせいたします。

○審査結果

[論文の部]
該当作なし

[著書の部]
小林 瑠音『英国のコミュニティ・アートとアーツカウンシル タンポポとバラの攻防』(水曜社、2023年)


○受賞作についての詳細

[受賞作]
小林 瑠音『英国のコミュニティ・アートとアーツカウンシル タンポポとバラの攻防』(水曜社、2023年)

[講評]
本作は、英国のコミュニティ・アート運動をアーツカウンシルとそれを取り巻く文化政策の視点から分析した労作である。先行研究が少ない中、膨大な資料と豊富な資料と関係者へのインタビューを通じて、コミュニティ・アート運動の歴史を詳細に描き、文化支援をめぐる論争に新たな視座を提示している。特に、アーツカウンシルとの緊張関係を取り扱った第Ⅱ部はスリリングであり、「アームズレングスのジレンマ」の分析は興味深く評価された。一方、第Ⅰ部では理論的枠組みが不明確な点やインタビューと文献の参照を明確に区別していない点に関しては改善が望まれる。
全体的に、英国のコミュニティ・アートとアーツカウンシルの関係を深く考察した意義ある研究であり、アームズレングスのジレンマに関する考察は、日本の文化政策研究にも貢献するものである。また、コミュニティ・アートと1970年代の「新しい社会運動」との関連性や、文化政策上の課題についても重要な示唆を与えており、著者の将来性が期待される。


 

審査委員長  閔鎭京
審査副委員長 中村美亜
審査委員  井上敏
友岡邦之
中川幾郎

 


2025年3月に青森県八戸市で開催される第18回年次研究大会において表彰式が行われます。
その際、学会奨励賞を受賞された小林瑠音様には記念講演を行っていただく予定です。

 

> 第 3 回学会奨励賞審査結果 講評詳細